『りんごかもしれない』
ふつうのりんご。でも、もしかしたらりんごじゃないのかもしれない。。。
あるひ がっこうから かえってくると……
テーブルの うえに りんごが おいてあった。
……でも……もしかしたら
これは りんごじゃないのかもしれない。
- 著名 『りんごかもしれない』
- 著者 ヨシタケ シンスケ
- 出版社 ブロンズ新社
- 発行年月 2013年4月
●あらすじ
学校から帰ってきて
テーブルの上にりんごを見つけた男の子。
もしかしたら
これは りんごじゃないのかもしれない
と考えます。
もしかしたら おおきな
サクランボの いちぶかもしれない。
それか なかみは
ブドウゼリーなのかもしれない。
そんなふうに、どんどん想像がふくらんでいきます。
りんごには、心があるのかもしれないと想像したり、
きょうだいがいるのかもしれないと想像してみたり、、、
クスッと笑える想像が盛りだくさん。
そもそも なんで ここに あるんだろう。
ありとあらゆる想像をしたあと、
お母さんに聞きます。
おかあさん コレたべていーい?
さて、
いったいどんな味がするのでしょうか。
●感想
これは 本当に大人が想像したのかな?
と思ってしまうような
そんな 子どもの視点から描いた絵本です。
子どもにしか想像できないような
素敵な想像がたくさん出てきて
引き込まれて読んでしまいます。
ひとつのりんごから、
ありとあらゆる想像がひろがっていきます。
作者のヨシタケシンスケさんは
デビュー作『りんごかもしれない』について、
“答えはひとつじゃないときの方が
たくさんあったりするので、
あれかもしれない これかもしれない と
考えることは大事”
“なので それをひとつメッセージにできたらいいな”
ということを語られています。
ひとつのりんごを “りんご”としてみるのではなく、
その背景に色々なものを想像してみることは、
大切だと思います。
わたしは 子どもたちに、例えば
目の前に出された料理を見たときに、
これはどんな人がどんな想いで作ってくれたのか、
どうやってここまで運ばれてきたのか、
さらに 野菜やお米を作っている人の想いにまで
少しだけ 想いをめぐらせてくれたらいいな。
なんて思ったりします。
また、ヨシタケさんは
“本来どんな人にも見てほしい部分と見てほしくない部分がある。
つまり両方あってその人になっている。
人も社会も同じで、見えているものだけが全てじゃない”
と、見えない部分の大切さについておっしゃっています。
そういったことは、日々の生活の中では忘れがちですが、
私たちが接する人というのは仕事の同僚としての1側面であり、
友人としての1側面であり、
家族や夫婦でさえも
家族としての1側面にすぎないこと。
自分が見ている部分だけではその人を図れないということは
心に留めておく必要がありそうです。
りんごの1側面を見て見えない部分を想像する
『りんごかもしれない』のように、
見えている部分だけを見てそのものを捉えるのではなく、
見えない部分にもいろいろな可能性があることを知っているだけで、
少しだけ視野が広くなり、目の前の悩みも小さく感じるかもしれません。
わたしはこの本を子どもと一緒に読むことで、
そんなことを伝えていけたらと思っています。
作者のヨシタケシンスケさんについて
絵本作家、イラストレーター
1973年 神奈川県生まれ。筑波大学大学院芸術研究科総合造形コース修了。
日常の一コマを切り取ったスケッチ集や、装画、挿絵など、幅広く活動している。
MOE絵本屋さん大賞、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞、ニューヨーク・タイムズ最優秀絵本賞など、受賞多数。